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 前回は現在のベストセラー本『言語の本質』(中公新書)をテキストにして、卓抜なレポートと、参加者各位の高い問題意識のおかげで、非常に濃密な話し合いができました。

 この本の前半はオノマトペ論で、西洋では幼児語として低く扱われてきた擬音語・擬態語(日本ではよく使われる)をきちんと言語の中に位置づけようとする試みで、幼児の言語獲得過程や手話などの例を挙げながら、「記号接地問題」から考えて、身体性(直接的な感覚)に密着したオノパトペこそ言語の基礎である、と論じます。現代言語学の父フェルディナン・ド・ソシュールの。言語は記号であって、そこには必然性はなく、恣意性が見出されるだけだ、という立場への挑戦であることは、明言されています。しかし著者たちの論述には、いまいち説得力はない、との意見が、多くの参加者から出ました。

 後半は上を踏まえつつ、抽象語を典型とする、身体感覚との結びつきが見出せない、その意味では全く恣意的な、記号体系としての言語がどのように形成され、発展していくのかが考察されます。ここでは基本的に人間だけが行う、必ずしも論理的とは言えない(非論理的だ、とまでするのは言い過ぎだと由紀は思います)「仮定的推論(アブダクション)」を基にして、この言語の本質という大問題に取り組む、姿勢は示されています。

 ここでレポーターの河南さんは、目の前の現実から離れるので(何しろ、仮定ですから)、過誤の可能性を棄却できない推論の間隙をついて、プロパガンダは行われるのだ、という見解を示されました。もちろん一考に値しますが、ここを掘り下げるためには、プロパガンダとは何であり、推論形式そのものの問題はどうであるか、もう少し深く考えるべきでしょう。今後、何人かの人々と意見を交えていきたい課題の一つです。

 次回は、以下の要領で開催します。詳細はおってお知らせします。

                     記

  1.   1.  テキスト : 小浜逸郎『日本語は哲学する言語である』(徳間書店)
     

​​   2.レポーター : 小林 知行

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​   3.日 時 : 令和6年6月16日(日) 午後2時~6時

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   4. 場 所 :   ルノアール四谷店3階会議室A

         東京都新宿区四谷1-3-22 ℡.03-3351-1052

         四ツ谷駅四谷口より新道通りに入ってすぐ左手

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 5.   会 費 : 1,600円(当日徴収)

連絡先    由紀草一

​        luna2156@mtf.biglibe.ne.jp


​言語哲学研究会アーカイブ

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