言語哲学研究会
シネクラブ 黄昏
< シネクラブ黄昏アーカイブ>
みなさま
前回(9月22日)の「シネクラブ黄昏」は、弘中努さんのプレゼンでフリッツ・ラング監督「M」(1931年)を観て、話し合いました。
かなり以前の、ナチス台頭時代にできた作品ですが、少しも古さを感じさせず、これこそその後の犯罪映画を初めとして、多くのお手本になったと言われるのは当然でしょう。
ストーリーは、連続幼女殺人鬼が、警察と、この事件のおかげで取り締まりが強化され、「仕事」がやりにくくなった犯罪組織の双方に追われるというものです。前半は公的機関と非合法組織双方の捜査が進む過程を平行して描き、時に交錯させる(一方の科白が他方のと重なって場面転換される、など)手法は(私には今はどっちの話なのか、わかりづらい時もありましたが)、非常に斬新ではあります。後半の、最新のセキュリティ・システムを備えたビルの中で展開される逃走劇のスリリングさは、文句なしに楽しめました。
一方ドラマの内容については、いろいろ問題がありそうです。犯人の人物像がさほど掘り下げられていないのは、そこには焦点がないのだから、ということで措くとしても、時折挟まるブラック・ユーモアが、妙に生真面目に描かれるので、未消化感を残します。最後のクライマックスである犯罪者たちによる模擬裁判は、法を犯しいる者たちが法の大事さを語るという設定だけでもグロテスクであるはずなのに、弁護役の男(いやいや引き受けたと自ら言う、たぶんこれも犯罪者)が、「処分は当局に任せるべきだ」なんぞと熱弁するのは、文化大革命時の人民裁判よりよほど公正に感じられます。
などなど、他にもたくさん軽い疑問点が残り、その後、死刑制度をめぐる議論などで、存置派と廃止派双方の論拠として使われるなど、いろいろな主張のタネになってきたというプレゼンターの報告は、よく納得されました。
次回は以下の要領で実施します。皆様のご参加をお待ちします(この会のルールで、とりあげる作品は当日まで秘密です)。
記
1 期 日 令和7年1月12日 午後1時30分開場 午後2時開演
2 場 所 きゅりあん 4階 第1グループ活動室
〒140-0011 東京都品川区東大井5-18-1 電話03-5479-4100 FAX 03-5479-4110
アクセス : JR京浜東北線・東急大井町線・りんかい線 「大井町駅」 徒歩約2分
京浜急行線 「青物横丁駅」 徒歩約15分
3 プレゼンター 菊地一彦
4 会 費 1,000円(当日徴収)